お城の記事をいくつか書いていくと、だんだん気がついてきました。「専門用語が多い!」「知識が足りない!」「1回基礎から勉強したい!」。今回はお城の構造や役割など、知っておくと役立つお城の基礎知識をご紹介してみます。目指せ、お城マスター!
●戦とお城
お城は時代を経るごとに山城から平山城、平城へと形を変えていきました。それは、戦い方の変化と大きく関係しています。
武士が出現した平安時代中期。戦闘様式が「徒歩」から、馬に乗って弓を射る「騎射戦」に変わり、戦場も関東の平地部から山岳や湿地など場所を選ばなくなっていきました。
敵から身を守るためには、攻められにくく守りやすい場所に城をつくることが重要。それは敵を察知しやすい山の上。鎌倉時代から南北朝時代にかけて、武士たちは谷や尾根などを要害とし、その山頂に簡易的な山城を築きました。
戦が日常化した戦国時代に入ると、戦や軍隊は組織化し、築城技術も飛躍的な進歩をとげます。石垣を高く堅固に積めるようになることで、防衛力が高いお城を丘や台地、平地など標高が低い場所にも築くことが可能に。これにより、山城と麓に建てた屋敷が一体になった平山城や、家臣や商人、職人が暮らす城下町がセットになった平城が主流になっていきます。
①山城(やまじろ)
見晴らしの良い山頂に建てられる。自然の地形をいかしてつくられた要塞で、敵の攻撃を防御しやすい。水の確保や物資の運搬、曲輪の設計がしにくいのが難点。
②平山城(ひらやまじろ)
小山や丘、周囲の平地を利用して築かれる。山頂から麓まで一体化しているのが特徴。平地より少し高い場所にあるので、城主の力をアピールしやすい。山城と平山城の線引きはちょっと曖昧。
③平城(ひらじろ)
平地を利用して築かれる。使用できる面積が多いので、門や櫓などの防衛施設を充実させることができるほか、たくさんの兵士を収容することが可能。戦の少ない時代は政治や経済の拠点になった。
【こんなお城の形も!】
水城(海城)
海や川、湖など水のある地形を利用したお城。天然の水を使って水堀がつくれるので防御力が高い。水運も利用できるので経済的に発展しやすい。地盤が弱い、水害の恐れがあるのがマイナスポイント。
●縄張(なわばり)と曲輪(くるわ)
お城の情報に触れると、よく出てくるのが「縄張」という言葉。勢力範囲やテリトリーなどのイメージがありますが、お城でいう縄張は本丸や曲輪をどこに置くか?どんな城をつくる?かという設計計画を意味します。
縄を張って土地の境界線を定めるための言葉で、戦国時代以降はお城の建設用語として定着しました。
また、「曲輪」というのはざっくりいうと、城を構成する区画のこと。「郭」という字で書かれたり、「本丸」「二の丸」「三の丸」などと呼び名が変わったりしますが、すべて意味は同じです。建物の建築や何かしらの目的をもって確保されるエリアで、そこに土塁や石垣、堀などが付いてきます。
曲輪や本丸という言葉に「○」という意味の字があるのは、「丸い形は城の守備に有利だから」という考えの基づいて生まれたとか。
縄張は曲輪の配置や組み合わせによってたくさんの種類があり、江戸時代になって軍学者たちが「連郭式」「梯郭式」「輪郭式」などの形式に分類しました。
①連郭式(れんかくしき)
本丸、二の丸、三の丸など曲輪が並列して並んでいる。山の尾根筋など地形を変えにくい場所に建っているのが特徴。脇や背後の守りが薄くなるのが難点。
②梯郭式(ていかくしき)
谷や川、海など自然の要害に面して本丸を置き、残りの方向を二の丸、三の丸でカバーする。地形が険しい土地に城を築く場合はこの形式。山城や平山城に多い。
③階郭式(かいかくしき)
曲輪を階段状に配置。梯郭式と同じく山城や平山城に多い。
④輪郭式(りんかくしき)
本丸を中心に曲輪を二重、三重に重ねる形式。どの方向からの攻撃にもバランスよく対応できるが、広大な面積が必要。
⑤円郭式(えんかくしき)
本丸を中心に円形の曲輪が二重、三重に同心円状に重なる。かなり珍しい形式で、確認されているのは静岡県藤枝市の田中城のみ。
そのほか、全国には形式がはっきり分類できない城が結構たくさんあります。
⑥渦郭式(かかくしき)
本丸を中心に曲輪をぐるぐる巻きに配置。江戸城、姫路城、丸亀城など見られる。
⑦稜堡式(りょうほしき)
北海道にある星形の要塞・五稜郭が典型的。大砲に対応するため中世のイタリアで生み出された築城方式で、日本には3つの稜堡式城郭がある。
【その他、連結型・変形バージョン】
⑧並郭式(へいかくしき)
本丸と二の丸が並行に存在し、 そのまわりを三の丸が取り囲む。
⑨複合式(ふくごうしき)
梯郭式、連郭式、輪郭式など複数の形式を組み合わせたもの。